淡島千景について

豊田四郎監督による「夫婦善哉」(1955)や市川崑監督の「日本橋」(1956)、大庭秀雄監督の「君の名は」(1953-1954)など、淡島千景はちょっと摩れた感じの気のいい女の役が驚くほどよくはまる。襟元を大きく開けた着物の着方や、どんな方言のセリフでも潔く歯切れのよい口調、あでやかでありながら母性を感じさせる包容力が素敵なのである。

しかし私は、はすっぱな女性の役柄がとにかく苦手だ。人に愛されてこなかった、大事にされてこなかった、または悲惨な目に遭いすぎたせいで希望も持てず、捨てばちになっているような、絶望系軽佻浮薄な女性が描かれる映画は一種のスリラーだとさえ思う。淡島千景の演じる「摩れた感じの女」はぎりぎり許容範囲であるが、それでもそこはかとない恐ろしさを感じる。しかし淡島千景の凛とした美貌と確固たる存在感に救われる。

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